「子どもの憩いの村」スタディツアー(主催:教育と環境の「爽」企画室、共催:にいがたNGOネットワーク)に家内とともに参加した。
一行は教員3名、学校栄養士1名、大学生6名、小学生2名に我々をいれて14名であった。草の根ODAとしての地方のNGOが実践する国際協力の実態を見て、今後のあり方などを考えたいという私なりの考えもあった。
 インド南部の東海岸に位置するビシャカパトナムから車で1時間、コッタバルサに「片桐子供のいこいの村」があった。
 現在130人の孤児、ストリートチルドレン、レイルウエイチルドレン、障害児童、HIV遺児、HIV感染児童など収容している。この事業は現地NGOニューホープ(代表 エリアザル・ローズ)との共同プロジェクトとして建設された。敷地内にはもちろんニューホープの施設も混在し機能的に配置され、ニューホプに一元的に運営を委託しているものである。9エーカー(約36千平方メートル)という広大の敷地に給食、宿泊施設、をはじめとして職業訓練所、スラムの女性たちによる手工業生産品の生産も行っている。また農場を有しかぼちゃなど野菜の生産も行われていた。HIV患者の女性たちが乳牛を飼育し搾乳をしていた。小規模ではあるが教室もあり理科、社会、英語、日本語なども教えている。三棟の瞑想センターを有し毎朝三十分瞑想している。管理棟として図書館、事務所を有し、HIV患者のための診療所、ホスピスなどの施設まで整備している。さらに現在「世界に恵まれない地域に小学校を作る会」(代表者石川幸夫:株式会社イシカワ社長)から600万円の支援を受け8クラス(小3、中5)200人の本格的な学校を建設中である。現在の130人と同じ境遇の子どもたち70人を新たに収容するという。まさに壮大な「いこいの村」である。
 ローズ氏は高名な医師で、キリスト教精神に基づく人間愛は深く、ハンセン病撲滅運動を続けている。ムニグダでNew Hope Rural Leprosy Trustを経営しハンセン病患者、児童生徒を収容し、またムニクダの山岳地方に住みあたかも石器時代のような生活をしている山岳少数民族の医療相談から精神的なケア、生活相談まで行っている。オーストリア、イギリスそして日本など海外の賛同者からの寄付をベースとしているが、その慈善事業の広さと深さに感銘を受けた。
 ローズ氏はキリスト教精神に基づく深い人間愛をもち、医師としての技術知識が彼の行動を支えているのである。
 この度のツアーの最終日にガンジー博物館の入り口の通路で10歳くらいの子どもが泥だらけの顔をして死んでいるのかわからない状態で寝ていた。35度以上はあったろう、かんかん照りの中である。そしてその横で弟であろうか4〜5才くらいの男の子がしゃがんで「うんこ」をしていた。なんとも言いようのないショッキングなストリートチルドレンの実態を目撃した。
 10年前スタディツアーに参加した片桐夫妻は、駅頭で見かけたストリートチルドレンを目撃し、何とか助けなければならないと思い込みローズ氏に相談し、氏が日本に来たときも入念に打ち合わせしてできた片桐さんの夢の施設である。片桐夫妻が退職金を投じて建設したという決断にまず驚かされる。そして毎年の維持費捻出のためご主人は今でも夜警をしていると言う。片桐さんがローズ氏に出会ったことは幸運であった。来春には学校が開校する。インドは識字率が66%ときわめて低い、学校が出来ればすぐ認可され政府の補助対象となるとローズ氏は言う。
ここで卒業した子どもたちは生家を持たないから大学を出ても、社会へ出ても必ず帰ってくるであろう。その人たちが施設の将来を支えることになることを片桐・ローズ両氏とも期待している。片桐さんの人間愛とローズ氏の人間愛が生んだ奇跡である。このような究極の貧困を余儀なくされた孤児、ストリートチルドレン、障害者、HIV感染者など恵まれない子どもを対象とした教育、医療、福祉を複合した施設はインド国内にもないであろう。
この施設がひとつのモデルとなってインド国内に広がる可能性がある。いずれにしても片桐さんの投じた一石は、大きな波紋を拡げつつある。

本間栄三郎(にいがたNGOネットワーク理事長)