にいがたNGOネットワーク(Nネット)理事の青山清道さんより、会報2013年1月号に向けて寄稿していただきました。

”大英博物館の火炎土器をみて考えたこと” 

昨年,10月上旬,家内と久しぶりにイギリスへいってきた.
大英博物館の正面をはいった右側で,長岡市岩野原遺跡跡出土品の火炎土器が
特別展示されていた.
5,000年前の縄文人の感性や美意識を世界の人たちと共有することができた.
長岡市生まれの私には,これまでとは違った感慨深い見学となり,椅子にすわり
,ふと懐古した.

最初にイギリスを訪れたのは,昭和44年で,その後,昭和56年にロンドン大学の
インペリアル.カレッジの
ハッチンソン教授のもとに1ケ月滞在した.当時,インペリアル.カレッジにはロ
ンドン粘土の地すべりの安定問題を
地盤工学的な観点から解決すべく,最先端の実験設備がととのっていた.
イギリスの植民地だった国々を中心に世界中から研究者が集まっていた.
新潟県は全国でも有数の地すべり多発地帯である.
地盤工学のゼミに参加したり,イギリス各地の地すべりや道路建設の切り取り
斜面の現場を見学させていただいた.
学問や技術は,生きた人間が創造するという原点にたてば,有名なスケンプトン
教授の講義を聴いたり,握手したりすることにより先生の論文が,にわかに人間
臭く感じられることとなる.
この時の経験が,JHの磐越道建設時の地すべり検討委員会に参加させていただ
いた時,大いに役立った.
ハッチンソン教授宅のディナーパティに2回,招待された.
食事はいたって質素であったが,未知の人との出会いや英国人特有のユーモア
に富んだ会話が,とても楽しかった.
今まで,論文を通してしか知ることができなかった,世界のトップレベルの研究
者達となごやかな同じ場で
一時をすごすこができたということは,貴重な経験であった.
イギリス社会は,個人の責任というものを重視する一方で,その個人個人を互い
に尊重する.日本のように
団体主事の国ではないことを認識した.

ロンドンの市街地を抜けて郊外へでると,街道は起伏に富み,ゆるやかに上がっ
たり,下がったりで,トンネルがない.
起伏に富んだ大地をおおまかに石の壁で仕切った牧場で羊や牛が草を食んでい
る,のどかな光景が広がる.
木々は,日本の紅葉とはまったく別種の黄色や茶色に色ずいている.

イギリスはイングランド,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドからな
る連合王国である.
外交と軍隊を除いて分権が確立している.
エディンバラで,初めてスコットランド銀行発行の1ポンド紙幣を手にしたとき
,ニセ札ではないかと思った.

交通,通信の発達の結果,世界は狭くなっている.
いま,日本では海外留学を希望する若者が減少し,企業では海外赴任を嫌がる若
手社員が増えている.
資源の少ない日本の将来を考えると,憂慮すべき事態である.
ロンドンのヒースロー空港の使用料は15,000円であった.
それでも毎年,沢山の人たちがイギリスを訪れている.

青山清道(理事,元新潟大学教授)

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