インドの「子どもの憩いの村」で育った子どもたちを日本に呼びたい、私どもの住む新潟に連れて来たい、それは、長年の願いであった。
 1998年暮れに出会った、暗闇の中で薄い布切れにくるまって一人うずくまる幼児の姿に衝撃を受け、私どもは、2003年からこの活動を本格的に始めた。遥かなインドで、私どもの夢と理想を「我がもの」として受け止め、共同プロジェクトを展開してくれた、現地NGO・NEW HOPEの代表ローズ氏が、妻である副代表のMrs.Ruthと息子のMr. Ranjeet に託し、2003年の当初から暮らしていた、親のない4人の子どもたちを、自分の子どもとして登録・手続きをし、日本に派遣してくれたことに、今ここに、深く感謝の気持ちを捧げたい。
 これまで、幾多の試練と中傷誹謗を身に受けた私どもであるが、現実に4人の子どもたちが、「子どもの憩いの村」で暮らしている、身寄りない多くの子どもたちの代表として、成田空港に降り立ち、私の目の前に姿を現した時、私は、滂沱として流れる涙を止めることが出来なかった。「どう!これが心をこめて育て上げた、私どもの子どもたちよ!みんな見て!」と、叫びたかった。


【2014年9月15日21:00成田空港日本到着】
 
 子どもたちは、常に笑みを絶やすことなく、堂々と臆することなく、日本の誰もと接した。彼らは日本語で、「私はスブラマンヤムです。インド人です。チルドレンズ・ビレッジで暮らしています。」何という清々しさであろう。インド人としての誇りを持ち、しかも、日本人への畏敬の念を失わなかった子どもたち。私は、ただ嬉しかった。誇らしかった。
 
 この企画にあたっては、初めから終わりまで協力を惜しまなかった新潟県青年海外協力協会事務局長の井口昭夫氏と、2013年暮れから協議を重ねた。1月には計画書を練り上げ、2月には関係機関への依頼状を発送し、重要機関の後援も取り付けた。訪問先の学校の承諾も漕ぎつけた。活動拠点となる、新潟県立青少年研修センターの承認も頂いた。しかし、思わぬ障害にぶち当たった。親がなく、出自の明らかでない子どもたちのパスポート取得は容易ではなかった。
 
 こうして、「インドと日本の高校生の共学・交流in 新潟」の活動は始まった。
 全ての分野での、多くの皆さまのボランタリーなご協力なくしては、この事業は成立しなかった。ただ、ただ、その崇高な精神にこうべを垂れるのみである。新潟県立青少年研修センターは、今後、国際交流面でのサポートに対して、大きな役割を担うこととなろう。初めてのケースとなったこういった活動に、施設を快く提供してくださったことに敬意を表する。
また、新潟県副知事をはじめ、いずれの表敬訪問先においても、インドの民間親善使節団として、子どもたちを温かく迎えてくださったことに感謝したい。


【9月17日新潟市友好会館でNネットを表敬訪問】
 
 新潟市立江南小学校では、地域の英会話サークルの皆さんが、通訳の全面的協力を引き受けてくださった。インドの一行は、小学生の子どもたちの無邪気な笑顔で、見る見る緊張を解きほぐし、異国の風土に溶け込んでいった。
 新潟市立西川中学校では、全校ランチのてんこ盛りの栗ごはんで、驚きのおもてなしをしてくださった。生徒会が中心となって学校を案内し、恒例となっているクリスマスプレゼントを、今年も全校で実施すると約束してくれた。
 日本の高校生との共学・交流が今回の事業の主たる目的であるが、東京学館新潟高等学校は、見事なまでに応えてくださった。全校生徒1,300人が居並ぶ体育館で、ブラスバンド部はインド国歌の生演奏で迎えてくれた。高揚する雰囲気の中、両国の校長先生のご挨拶とプレゼント交換。校長Mrs.Ruthのスピーチに続いて、4人のインドの子どもたちのメッセージ。生徒会長の歓迎の挨拶。最後のダンス部とのAKB48「恋する…」の共演は圧巻だった。友情のハイタッチ!全校生徒も感動したに違いない。その後、茶道部から抹茶の正式な作法を受け、柔道部の豪快な練習を見せていただき、名残惜しんで、学校を後にした。


【9月21日新潟ファイナルパーティーで。1週間生活を共にした高校生たち】
 
 大学は、弥彦山が見下ろす田園の中、広々としたキャンバスを有する、新潟国際情報大学。本年誕生した国際学部の学生との英語のミーティングは有意義であった。ブルボンのキャラクターに似た温厚な平山学長の訓話は、私どもの今後の活動に大きな示唆を与えるもので、愛情に溢れるお言葉は心に沁みた。
 
 本事業は、インドの高校生のみならず、1週間の生活を共にした日本の高校生にとっても、多くの刺激と啓発を受けたことと思う。今後、インドと日本の関係は、一段と重要性を増してくるであろう。とにもかくにも、インドの有する日本の10倍もの人口は大きな資産となろう。資源のない日本は、技術や人材という大きな資産がある。お互いが、おのれの長所を発揮し、若人が切磋琢磨する共学・交流の機会は、今後も意図して持つべきであろう。


【9月23日11:20成田空港日本出国】
 
 最後に、東京学館新潟高等学校から頂いた、「学館短歌集」(第四集2012〜2013)に掲載されていた一句を紹介したい。(学校の許可をいただきました。)
 
 
シャーペンの芯の固さにF選ぶ僕の未来が折れないように  山田 快さん
 
 瑞々しい感性と切ないまでの心の叫びを思いやる。若人の未来は遥かに、そして限りなく輝いている。そう、これからはあなた方の時代だ。
私ども大人は、煌めきの時代へ向かってひた駈けるあなた方を、ただ黙って見守り、見送るのみである。あなた方の未来が折れないようにと願いながら。
 
教育と環境の「爽」企画室 代表 片桐 和子