「新潟アピの会」会報第17号より、渡邊茉莉さん・スタディツアー報告です。
 
2014年9月22日から同29日までの日程で、堀内綾さんとスリランカに滞在した。飛行機から見た初めてのスリランカは既に夜だった。日本の夜景のように光が整列されているわけではなく散在して見え、不思議な感覚を持ったまま着陸を待っていた。
私の旅の最大の目的は「自分で何かの役に立つ」こと、その次に「スリランカを体験する」ことだった。私は高校時代から大学2年の半ばまで同居する祖父の介護や家族のサポートをしてきた。自分が役に立っている、自分がいる意味を介護やサポートに見出していたが、その必要がなくなったとき、つまり役に立てる場面がなくなった時、自分の存在する意味があやふやになっていることに気がついた。そんな時に倉田さんから、スリランカで手伝いをしてくれないかと声をかけられ、行きますと返事をしたのである。
 
今回の旅ではマータラの孤児院とハンバントータの孤児院を訪問し、音楽と踊りを紹介し一緒に体験することを堀内綾さんとともに企画した。日本で人気のダンスとしてAKB48の恋するフォーチュンクッキー、伝統的な踊りとして新潟甚句を用意した。ノリが良く、次々に派手な振り付けに切り替わる恋チュンはどちらの孤児院でも人気で、フルで10回ほど踊った。新潟甚句は踊りが単純であるため、年齢の低い子でも比較的簡単に覚えられ和気あいあいと踊ることができた。


マータラでは現地の踊りを練習している様子(写真1)を見せてもらったが、こちらは同じ振りを4回、8回と偶数回繰り返すことが多いように見えた。この踊りに比べると新潟甚句は簡単で、すぐに覚えるのも納得だった。
 
どちらの孤児院でも子ども達がはしゃいでいたが、普段も同様に賑やかなのか、そうでないのか想像がつかなかった。堀内さんがマータラの孤児院に滞在したことがあるというので尋ねたところ、普段はほとんどすることがなく、変化がないらしい。だからこそ私や堀内さんのような普段いない人、見かけない容姿をもつ存在が現れたこと、聞いたことのない音楽を持ってきて、見たことのない踊りを一緒に踊るというのは、とてつもない刺激になったのではないだろうか。変化のない日々を根本的なところから解決する方法ではないが、踊りや音楽は私たちがいなくてもできる。多少継続性のある刺激になることができたのではないかと思う。
 
孤児院への訪問に加え、様々に特徴を持った地域を巡ることができた。まず、空港から首都コロンボへ向かった。コロンボは様々な人が行き交い、英語が飛び交う都会だった。次いで向かったマータラは自然豊かな農村で、水田を通って宿泊先へ向かった。米の研究している私としてはじっくり見ることができなかったのが残念である。しかし孤児院で食事の用意を見学することができ、ココナッツ削りを体験できたのは料理好きにとって非常に嬉しいことだった(写真2)。

マータラから高速道路を走って向かったハンバントータは厳しく乾燥した平地だった。塩害、渇水、乾燥、日中の高温、野生像の脅威など住むには大変苦しい土地だった。ここで初めて参加した夜の祈り(puja)をとても真剣に行っている様子が伺われた。乾いた土地の後向かったのは雨の降るエッラだった。宿の中も心なしか湿り気があり、一つの島の中でこうも気候が違うのかとため息をついてしまった。ローカルバスを乗り継いで移動した先はヌワラエリヤで、ここでさらに強い雨に打たれ、そんな中でも働く紅茶園の人たちを見かけた。手で摘み取り運んでいる人を見る前と後では、紅茶一杯に対する価値というのが変わって見えた。日本では2〜3杯飲めるティーポット一つで1000円前後、一杯あたり300円程。それまでは高い飲み物だと思っていたけれども、当然だという気になった。しかし、紅茶園に併設されたティールームで一杯50円しない価格で提供されており、今まで以上に驚いてしまった。
 
ヌワラエリヤから列車で移動した先、キャンディは人と活気の溢れる都市で、色々な人が色々な目的で出歩いていることが伺われた。ここで一番驚いたのは、トイレの出入り口の両脇におもちゃの大きな露店が店を構えていたことである。日本であれば、なぜここにこの店があるのかという意図がすぐにわかる。 例えば、ビジネスホテルの隣にコンビニエンスストアなら晩酌や急遽必要になった下着などを買ってもらうためだろうといった具合である。しかし、スリランカで見かけたのは、山道の途中で売られている浮き輪だったり、山中の農村と農村の間を通る道路脇で野菜を売る人の姿だったり、本当にそこに人が来るのだろうかと思ってしまう。こういうところが、日本とスリランカの違いの一つかもしれない。
 
こうやって比較することで、日本にいるだけでは見えにくかった日本の一面に気づくことができた。これは「スリランカを体験する」ことによるよい影響だと思う。 残念なことに今回はスリランカ医療の最大の特徴であるアーユルヴェーダを体験することができなかったので、次の機会にはぜひ体験したいと思う。
 
新潟大学大学院 自然科学研究科
生物化学研究室 修士2年 渡邊茉莉

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