元ネパール・ムスタン地域開発協力会理事(現 Nネット理事)の原千賀子さんより、近藤亨先生への追悼
ムスタン爺さまの髭             
GHAMIの台地に寄せて     近藤 亨著ムスタンへの旅立ちより抜粋
草も木もない 見渡す限りの灰色の台地
ただ谿流に沿って細々と暮らす一握りの貧しい農家の群れ
君たちの今の暮らしに果たして何の夢があるのだ
夢も無い希望もない飄々と胡砂吹く風の台地
ただあるものは年毎に深く刻まれる諦念の碑
君たちに果たして明日の糧があるのか
さあ目覚めるのだ 立ち上がるのだ 俺とスクラムを組んで
この眼にしみる紺碧の空 灼熱の太陽が
氷河湖の滾々と湧き出る無限の水が
実は天が君たちに贈った最大の宝物だったのだ
さあ俺と一緒に立ち上がろう 俺は君たちの道標
ただまっしぐらに俺の跡についてくればいい もう大丈夫だ
この不毛の果てしない台地が 夢のある希望溢れる 沃野に蘇る日は近い
ネパールの首都カトマンズからムスタン地域に入るには、徒歩で一週間、小型飛行機で乗り継ぎ二日の道のりです。さらにGHAMIに入るには特別入山許可と、高額な入山料がかかり、四千メートル超の険しい峠を馬で幾つも越えて三日を要します。近藤亨氏が周囲の反対を押し切り広大なGHAMI台地開発に着手した時から髭を伸ばし始めました。三千八百メートルの厳しい台地に独居しながらの開発、言わば覚悟の髭は、亡くなるまで氏のトレードマークになったのです。
ヒマラヤの大自然に身を置くとき、神々しい山々に思わずひれ伏し、生きている実感に胸が高鳴り、強風と乾燥に立ち向かう<気>に満たされます。気持ちが挫けそうになった時は、蒼穹を見あげたい。その先はヒマラヤにつながり、白馬に跨る髭の翁が見えてきますから。
原 千賀子